人間の心の中には、すぐに思い出すことのできる意識の世界と、忘却の中に沈められてはいても、心の一面を形造っている無意識の世界とがあります。
遠い過去の記憶や、あまりにつらかったために無理に忘れようとした記憶などは、無意識の世界に沈んでいるために、すっかり忘れているように思えます。
しかし、何かをきっかけに、ありありと意識の中によみがえるものです。
心理療法の1つの芸術療法は、無意識下に沈んだ記憶をよみがえらせて、心を開放させるための手段として使われます。
不安や葛藤を思うように言語化できないときの、治療の手掛かりとしても使われます。
芸術療法の1つに、メス・ペインティングという技法があります。これは、手に絵の具をつけて、手の動きに任せて、画用紙に好きなように絵を描いていくものです。
ヌルヌルとした絵の具の感触と、描いている過程でしだいに浮かんでくるイメージによって、自分の心の底に沈んでいた感情がよみがえってきます。
それを再認知し、解き放つことが、芸術療法の目的です。
この芸術療法は、熟練した心理療法家が治療目的に応じて施行するものです。
しかし、軽いストレス程度なら、休日などにメス・ペインティングを楽しんでみてはいかがでしょうか。
人の目を気にせず、自分の心の深層を発散させるつもりで描いていると、自然と心が開放されます。